野菜に敬意を!「Alaska zwei」 定番メニューのヴィーガンカレー&から揚げをミールキットに


最近ではヴィーガンという言葉も聞き慣れてきて、ヴィーガンのカフェやレストラン、食材も増えてきました。でも、ひとことでヴィーガンと言っても、お店によって味付け、メニューはもちろん、スタイルもテイストもいろいろ。あめつちがヴィーガンのミールキットを作るにあたり、タッグを組んだのは、カジュアルな雰囲気が心地よい東京・中目黒のヴィーガンカフェ「Alaska zwei(アラスカツヴァイ)」。オーナーの大皿彩子さんに、アラスカツヴァイらしいヴィーガン料理へのアプローチとは何か。そして、どのようにミールキットのメニューを組み立てていったのか、開発エピソードを聞きました。

アラスカツヴァイ流ヴィーガン料理の“3つの戦略”

「アラスカツヴァイには、店長はいますが、料理長という肩書きはなく、みんなが料理をします。その日に届いた野菜でベストなものを作る。定番メニューはありますが、これと決まったレシピがあるわけでありません。何をもってうちの料理とするかというと、3つの戦略と呼んでいるルールがあって、それさえ守っていれば、基本的には何を作ってもいいんです。

1つ目は、ヴィーガンだろうがなかろうが、美味しいと思えること。どうしても野菜料理の店と聞くと、皆さん優しい味と表現されることが多いように、家庭料理になりがちなんですが、わざわざお金を払って誰かに作ってもらうご飯は、ハレの味であるべきだと思っています。だから、いつでもお家で食べられる味ではなく、外食するにふさわしい、誰にとっても美味しい味にすること。

2つ目は、見た目も香りも含めて、テーブルの目の前に届いた瞬間に心が躍るか。そして、最後3つ目が、男性がもう一度食べたいと思うか。それは女性はターゲットではないという意味ではなく、例えば、女性はアサイーボウルは美容にいいから、食べるとお肌がきれいになるって言われたら、美味しいといって食べてくれます。でも、男性は同じアサイーボウルを泥みたい、ブルーベリーのほう美味しいじゃん、なんでこれに1000円も払うの?というように、美味しさに対してすごく直感的というか本能的だと思います。だから、男性が美味しい、もう一度食べたいと思うかというのは、言い換えれば、要は説明不要で理屈抜きに美味しいかということで。

  1. ビーガンでもそうでない人でも美味しい味か
  2. 心が踊る見た目か
  3. 男性がもう一度食べたいか

これがうちらしいこだわりです」

カレーとから揚げ。定番メニューをミールキットに選んだ理由

「から揚げプレートはアラスカツヴァイの定番のメニューですが、だからといって一年中ずっと同じわけではなく、毎日違う副菜を出しています。まさにそういうことがミールキットで再現できたらいいなと思いました。から揚げ自体は定番でも、そこに添えられる副菜やソースはずっと変わり続けるようにしたいです。から揚げの味付けは、いわゆる和風の鶏から揚げと同じで、生姜とニンニクのつけダレに大豆ミートをかなりじっくり漬けて、手間なんですけど、手搾りをしています。そこに和風の濃い味に華を添える感じで、酸味のあるソースをつけました。

カレーも人気メニューで、作り手である私達もヴィーガンのカレーは本当に美味しいと思っていて、ヴィーガンのカレーだったら、毎日でも食べられるほどです。やっぱり動物性の油よりも植物性の油のほうが重たくないので、体にすごくよくしみているように感じます。ただビーガンのカレーを一から作る家庭は少ないと思うのと、実際大量の野菜を煮込んで作った方が美味しいし、なるべく植物性だけで作ったカレーを食べる機会を増やしたいし、増えてほしいと思っています。

私達にとって、カレーはおいしい野菜をスパイスで煮込んだ料理なので、野菜の美味しさも栄養も本当にパワーアップさせて取れる形で、しかも何回も食べたくなる、誰にでも届く料理ということでカレーをチョイスしました。辛さも抑えているので、お子さんでも食べられると思います」

「佐土原なす」のステーキをカレーにオンする感覚

「宮崎の伝統品種を守ろうと頑張って育てている生産者さんがいて、それをネットなどで拝見したときに、あまり切り刻んではいけないように思えてきて、トロトロのなすの食感を活かすよう敬意を払いました。ステーキのように厚切りにして、カレーにとんかつをトッピングするように、もう一つご馳走をプラスする感覚です」

ラッシーで甘酒のポテンシャルを伝える

「ラッシーは、カレーと一緒に飲むということもありますが、ヴィーガンで甘酒という食材は面白くて、アラスカツヴァイでは米麹と米と作っていますが、飲む点滴と言われるほどアミノ酸の宝庫。その甘酒の苦手な方にも、発酵飲料としてちょっと酸味を合わせることでヨーグルトのように飲めれば、甘酒を飲むシーンがもっと広がります。無国籍な感じの店なので、どんな素材でも使い方、調理の仕方は自由に考えているので、こんな飲み方があるんだと意外性を楽しんでもらえれば嬉しいです」

「八ヶ岳生とうもろこし」の甘さと食感を引き立てるシンプル味

「甘さにこだわっている「八ヶ岳生とうもろこし」を生かすときに、なるべく手を加えずに、そのままの食べるのが一番だと思い、シンプルなコールスローのサラダにしました。旬の野菜同士やっぱり相性もいいので、夏をそのまま味わってほしい。他の夏野菜と合わせたときにやっぱりとうもろこしの甘さは抜群なので、甘味とシャキシャキ感が生きるシンプルな味付けにしました」

「ヴィーガン料理は、自分達の技術よりも、素材の素晴らしさや素材のパワーが一番だから、今回のミールキットのように、その土地ならではのこだわって作った野菜には、それを使う意義を考えながら、野菜に敬意を持って作るのが大事」と大皿さんは言います。

日本全国津々浦々、その土地でしか味わえない伝統野菜、こだわりをもって丁寧に作る生産者さんのレアな野菜。旬の野菜が、何より美味しく主役になることを第一に、ヴィーガンミールキットという形でお届けします。第二弾は、冬野菜をテーマに開発しますのでお楽しみに。

 

あめつちヴィーガンミールキット

宮崎 佐土原なすのキーマカレーと日向夏のラッシー

八ヶ岳生とうもろこしのコールスローと大豆ミートのから揚げ

 

大皿彩子(Saiko Ohsara)
「さいころ食堂」代表
「Alaska zwei」店主 / 「Universal Bakes and Cafe」 店主
フードプランナー。広告代理店を経て、2012 年12 月( 株) さいころ食堂を設立。2016 年9 月、東京・中目黒に100% Vegan メニューを提供する飲食店「Alaska zwei」をオープン。2020 年5月、東京・世田谷代田に100% Vegan のベーカリーカフェ「Universal Bakes and Cafe」をオープン。食に関わるプランニング / プロデュース / 原稿提供 / メニュー開発 / 料理教室の開催 など“おいしい企画” を制作している。 

Photos:Aya Kawachi, Yuji Namba Edit & Text:Masumi Sasaki